読み物
「鶴は千年、亀は万年」— 亀はなぜ長寿の象徴になったのか
蓬莱山の使い、四神の玄武、甲羅に藻をまとう蓑亀。日本人が亀に長寿を託してきた理由をたどります。
婚礼の打掛、能装束の扇、蒔絵の重箱。日本の美術品や工芸品には、驚くほど頻繁に亀が登場します。決まって鶴とセットで、松竹梅のそばに。「鶴は千年、亀は万年」ということわざの通り、亀は長寿とめでたさの象徴として描かれ続けてきました。
そのルーツは古代中国の神仙思想にあります。東の海の彼方には仙人が住む不老不死の霊山「蓬莱山」があり、その山は巨大な亀の背に載っている——そんな伝説が日本に伝わり、亀は「仙境からの使い」として縁起物になりました。実際に亀は爬虫類の中でも際立って寿命が長く、100年以上生きる種も珍しくありません。「万年」は誇張でも、方向性は正しかったわけです。
方角を守る四神のうち、北を守る「玄武」も亀(と蛇)の姿をしています。奈良県明日香村のキトラ古墳の壁画にも玄武が描かれており、亀の霊獣としての歴史は日本でも1300年以上さかのぼれます。
美術品でとりわけ愛されたのが「蓑亀(みのがめ)」です。長く生きた亀の甲羅に藻が生えて、蓑のようにたなびく——という姿で、長寿のシンボルの中でもさらに縁起の良い存在とされました。葛飾北斎の「水中の亀」にも、甲羅に藻をまとった蓑亀が描かれています。実際に甲羅に藻類が付着した亀は存在するので、蓑亀は空想と観察が半分ずつ混ざった、日本らしいモチーフといえます。
亀の甲羅の六角形から生まれた「亀甲文様」は、正倉院宝物の時代から続く伝統文様になりました。Kamepediaのロゴの甲羅にも、この亀甲が隠れています。
